新しいコトは素敵なこと

最近強く感じることに、印刷という受注産業の会社が変わるきっかけというのはほとんどがお客さんの要望が引き金になっているということ。

これが、例えばおもちゃを企画製造販売している会社なら、現行商品の売れ行きが傾く前に次の商品をゼロから自分たちで考えないといけない。最近の子供の数や流行りはもちろん、お財布をにぎる親や祖父母世代の消費行動まで視野において、よし次の商品と売り方の戦略はこれだ!となる。子供は「こんな商品つくってくれたら買うよ」とは教えてくれない。(言ってくれるかもしれないが、その子供にしか売れないかもしれない)

一方で私たちは「あれをデザインして」「これを増刷して」と目の前でお客さんに教えてもらいながら受注するわけでちょっと楽をし過ぎなんじゃないかと思うときもある。楽をして余っているエネルギーをその分、どこか別のところに注入してお客さんに別の形で喜んでもらわないと先がないんじゃないか。

ただし、上のようなマスの規模にモノを売るおもちゃ会社とは違い法人顧客からの売上が主なので、お客さんから「おたくの会社、ダメ。もうつきあいません」と言われたらすべて終わりという怖さはある。したがって「お客さんが言っているんだからなんとかしなきゃ」という言葉が社内にかなり深く響く。

そしてその言葉は、長い目で見たときは当社に対する良い助言になっていることが多い。

これまでも大きな割合でお客さんがくれた課題が、私たちを前向きに押してくれてきた。お客さんがお題をだしてくれて、それを解くために一生懸命考えて、なんとか形にして。そうやって組織として学んだことをまた別の仕事に生かし新しいモノやコトを取り込みながら少しずつ上に向かうという形で。実にありがたい話だと思う。

ただこれからは、少しずつでもかまわないから「お客様からのお題」を解くかたわらで、自分たちの力で自分たちをドライブさせる「新しい課題」を作り出したいと思っている。「新しいコトにとびつく」というのは節操がないといわれても、ウチの会社はそうありたい。その方が苦しいだろうけど楽しそう。


近頃ちょっと新しめの技術を使って、小さいけれども実験的な受注に取り組んでいる。普通だったら、そんなややこしい仕事受注しなくてもいいのに、というニュアンスの仕事。当然、未知の障害がいろいろと現れてそのたびにわーわーと騒いでは試行錯誤ということを繰り返す。そんななか先日、困って相談した印刷現場のベテランが、素敵な解決策をぽろっと口にしてくれて、ああナルホド!とヒントをもらい問題解決した。これが嬉しい。


新しいコトの効用は、何もITや新技術のスタッフだけが活躍するわけではなく、既存の印刷技術の土台があって初めて活き、また既存の技術を知る人も同時に活かすところにあると実感した。データベースの処理をする人間が、印刷の現場の人間と一緒に解決策を探る。外部の人には何ともない光景かもしれないけれども、これは中規模の印刷現場を中に持つ会社でないと難しい。

「顧客要望が突き刺さる社内文化」に加えて「自らで考えた新しいコトが自分たちを引っ張る文化」へ。


短距離の末続選手で有名になった「ナンバ走り」は、体を敢えて不安定な状態におくから足が前に出る、みたいな話を読んだことがある。
安住しない。うちの会社もある部分ではそんな考え方でいきたいと思う。