印刷ハック〜デザインのひきだし

「デザインのひきだし」先日第18号が発刊されました。
いつもご近所の素敵な本屋「柳々堂」さんが会社まで持ってきてくださいます。
今号もご多分にもれず素晴らしい本づくり。よくぞこんな本をつくっていただきました、と感謝しながら毎号食い入るように読んでます。
今回は「蛍光・最高!」ということで表紙だけでなく小口にまで蛍光が。



本の内容は、デザイン関連の方々や印刷業界周辺の人々、あとは紙好きな人くらいしか興味をかきたてられないかも。けれども、この本を編集・デザインをされた作り手の方々の、紙と印刷への好奇心、探究心、愛情が痛いほど感じられる本。またいつも特集内容が、印刷を生業としている自分からみても、いや生業としているからこそかもしれない、ビックリするような企てで溢れており、「しまった!その視点はなかった・・・」といつもため息をついてしまいます。もちろんそのため息には感嘆だけでなく「ああ、これって印刷会社がやらなきゃいけないことじゃないの・・・」という自責もたくさん含んでたり。


雑誌「Web Designing 12月号」で編集長の津田さんが、グラフィックデザイナーの永原康史さんと対談をされていました。
この対談の本文を読む前に、このタイトルを見ただけで膝をうちました。

「過剰なる印刷ハッカーの冒険」

本文中で永原氏が”ああ!ハックなんだ。”とおっしゃります。ご慧眼!そうそう、この「ひきだし」ってまさに印刷ハックな本ですよね!と読むと頷くことばかり。
Web Designing (ウェブデザイニング) 2012年 12月号 [雑誌]


対談の中でこれは素敵!という津田さんのお言葉があったので引用させていただきます。

永原:印刷も再現度だけを目標にしていた時代がありましたよね。
津田:今でもそういうことを考えている人はたくさんいますよ。『ひきだし』でもいろいろな印刷のテストをするんですが、印刷会社やインキメーカーは、きれいなコート紙に、いかにきれいに刷るかばかりを求めたり。こっちは安い紙でおもしろく刷る方法を知りたいのに。そこのアドバンテージを理解していない人が多い。
永原:再現度を求めたら、紙で刷っても、モニタに映してもゴールは同じ。でもそれぞれの特徴を活かしていったら違うゴールに行き着きますよね。
津田:そうですよね。いかに実物に近く再現するかがじゅうようなものもありますけど、この紙に刷るとこうなる、違う紙ならこうなるっていうのが印刷。印刷業界全体で”印刷ならでは”のことを考えなくちゃいけないのに、広色域のインキをつくって、RGBに迫る再現性とか言ってる。モニタ上の表示をそのまま紙で再現するとかってどうなの?(笑)
ー中略ー
印刷ってインキがガツンと乗っていて、インパクトがあるのがいいところ。モニタや写真とは別物。もっと別のところに目を向けたほうがいいのにって思います。


Web Designing 2012年12月号, p108

本来であれば印刷会社である私たちこそが、この「紙、印刷ならではの特徴を活かした」モノやコトを一生懸命に考えて、そして実際に印刷機をつかって実験してみて、というものづくりを頑張らないとだめだと思っています。
この「デザインのひきだし」は創刊の頃から読んでいますが、はじめはそれにすら気づかず、単なるおもしろ実験本だと思っていました。(もちろん今でもおもしろ実験本としても凄いクオリティですが)
今では、この本が小さな新しい市場を創りあげたと勝手に思っています。少なくとも刷る側である私に与えた影響は大きい。

うちの会社でも最初は一部買っては数人で回し読み、みたいな買い方だったのですが、近頃では最初から三〜四部まとめ買いでその内容はもちろんのこと、ハッカーな姿勢までも学ばせていただいてます。

デザインのひきだし18
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おまけ。今号は蛍光特集だけに、部屋を真っ暗にしてブラックライトを当てると・・・(写真ではわかりにくいかな?)
本まるごと光りました。思わずおぉ!と声が出るくらいには光ります。本買った人はぜひお試しあれ。