部分と全体

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昨年の11月に当社グループのデザイン会社(株)アサックでつくっている日めくりカレンダーの話をしました。
oka.hateblo.jp

日めくりカレンダー、それもあの昭和から残るあのタイプの日めくりカレンダーを偏愛しています。
日めくりカレンダーの何が良いのかと挙げていけば、あの薄い純白ロールの紙の感じ、めくるとき(引き抜くとき)の動作の触覚に訴えるところ、六曜や二十四節気以外にもいったい何種類あるのかわからない暦、などなど。さらには年末になると残り少なくなる、ということが目視やめくるという動作で直感的に感じられるということも素敵要素に付け加えたいです。

普通のカレンダーだと平面が繰り返すだけですが、これが紙を重ねることで三次元になって視覚に訴え、「365日ある1年のうち、今がどの時点かがだいたいわかる」という点。
部分と全体の関係がひとつのかたちになっている。

冒頭の写真は、当社がお世話になっているアグフアさん(あのヨーロッパのフィルム会社Agfaです。印刷に使う版を供給していただいています。)から昨年末に頂戴した日めくりカレンダー。これが面白い。
1年間が一辺8cmの立方体になっていって、毎日1枚ずつをミシン目でちぎっていく形になります。

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ご覧のように、ちょうど12ヶ月のうちの12分の1が終了してしまったんだな、ということが立体でわかるところが素敵です。
1年のスタートは完全な立方体で、そこから日々がちぎられて欠落、日が経つにつれててもとの形がわからなくなってしまうはかなさ。
日付を知るだけだったらデジタル時計でもいいし、平面のカレンダーでもいい。けれどもその日付が、全体である1年のうちどこに位置している部分なのかは視覚ではわかりません。

カレンダーに限らず、紙にプリントだけだったら平面、2次元的に情報を把握することになりますが、その紙葉を重ねて3次元にすることでより情報が立体的、直感的に感じられる。
これは本の特徴、分厚い本にしおりを挟んで「あとこれぐらいでこの本も読了だな」と体感できるのと通じるものがあります。いまどのページ、部分にいるかすぐにはわからない電子書籍に対して、こっちはリアルに今の場所が全体に対してだいたいわかる。
紙の加工、それによって表現される情報、呼び起こされる感情。このカレンダーを見ていて、まだまだこの世界には楽しい可能性があるなとワクワクします。