クリアバック製本(4)開きの良い手帳

前回の続き。

強度と開きを持ち合わせているクリアバック製本、
手帳のサンプルを作ってみました。


手帳を開いた時の感触って本を開いた時とは違う、というのは日頃は意識せずとも、なんとなくわかりますか?
もしお手元に手帳と本があれば試してみてください。
本は開いてもフラットにはなりませんが、手帳はノートのようにパカッと完全に開くはず。

この手帳の開きを実現しているのが「糸かがり製本」です。
前回も説明しました、糸かがり製本の工程はこんな感じ。

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糸かがり製本の工程


強度に優れていて、かつ開きもとても良い。
辞書のように酷使される本にも使われています。製本の王様だと思います。

さらに、その糸かがりの部分がむき出しになっている「コデックス装」という製本になると、開きを邪魔する背表紙がないので、完全にフラットに。

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コデックス装


ただ残念なのが糸かがり製本の初期費用が高いこと。
折り工程があると、どうしても経済的な最低ロットが少なくとも1000部を超えてしまいます。となると、印刷方法もオフセットとなり、「糸かがり製本で手帳を作る」と決めた時点でで少なく見積もっても数十万円以上はかかってしまいます。
なんとか、数万円~十数万円程度の予算で手帳を小ロットで作れないか?となると、無線綴じ、またはホチキスによる中綴じを選択せざるを得ません。無線綴じだと開きが犠牲になり、中綴じになるとページ数が犠牲に。


ということでクリアバックで作ってみました。サイズは小さくした方が、開きに関してシビアなテストができます。

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iphoneより少し大きいサイズ
開きだけで比べると糸かがりの手帳に少々劣るのですが、実用には十分なレベルです。

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手で少し押さえただけでこれくらいは開きます


10部~100部程度の数量から、強度もありかつ開きの良い手帳を作れないか?というお題に対しては必要十分な回答になっているテスト結果となりました。

クリアバック製本(3)厚紙だけで構成された本

昨年末に書いたエントリーのつづき。

oka.hateblo.jp
oka.hateblo.jp


クリアバック製本と銘打って、いろいろとサンプルを作っています。
新しくつくりました。「厚紙だけで構成された本」です。


一般的な無線とじは、0.1mm弱の厚さの紙(本文)を束ね、それより少し厚い0.1mm~0.15mm程度の表紙で巻く、というもの。
これ以上厚い紙で無線とじをするとどうなるか?

厚い紙は曲がらない(しならない)ので、本が最後まで開いてしまうことになり、本のノド(奥部分)と呼ばれる接着部が割れてしまう、ということになります。
むりやり本をぐうーっと押さえ込んで開いたら、バキッと割れた感じがして紙が抜け落ちてしまう、という経験をされた方もいるかと思います。

接着ができないなら、糸で綴じたら?
薄い紙なら「糸かがり製本」が可能ですが、厚紙はそもそも紙がキレイに折れませんので糸での固定も無理です。

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糸かがり製本

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これがクリアバック製本で本を作った場合、どうなるのでしょう?はたしてうまくいくのかな?

ということでクリアバック製本でサンプルを作ってみました。
0.4mm~0.6mmの範囲にある、5種類の厚紙だけで構成されています。

・富士共和製紙ディープマットインディゴ360kg
・五條製紙グロリアニューコート400gsm
・竹尾彩美カード412gsm
・五條製紙ドリームケント420gsm
・ダイワ板紙TKバガス450gsm

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表紙はディープマットインディゴ360kg。0.52mm厚です。開くと厚紙だけに完全にフラットに。強度も十分ぽいです。

どんな用途があるのか?などを考えるまえに、まず作ってみて、どこまでなにができるかを模索中。楽しいです。

「サッカー店長の戦術入門」

サッカー店長の戦術入門~「ポジショナル」vs.「ストーミング」の未来~ (光文社新書)

いったい何が書いてあるのか?…サッカー門外漢の私には最後までよくわかなかったです。にもかかわらず、夢中になって読んでしまいました。読後感も満足。
なんなんでしょうね。熱量かな?それとも語り口?内容?
プレーが専門ではない、戦術の専門家が語っているからおもしろいのかな。ほんと、最後まで何がなぜおもしろいのかよくわからないまま、けども満足に読了。


印刷とは全く関係のない話です。
プロサッカーリーグのJ1から数えてJ5にあたる関西サッカーリーグ1部の「おこしやす京都」ってご存じですか?
このチームが昨年のサッカー天皇杯で、J1のサンフレッチェ広島に5-1で勝ったという”事件”がありました。え?J5のチームがタレントも環境も資金も整ったJ1のチームに、1-0とかならまだしも、5-1で勝つなんてことがあるの?と驚いた記事はこちら。
この記事も超おもしろいです。

number.bunshun.jp

サッカー観戦が好きで世界中を放浪してた、それも自分ではボールもろくに扱えない、という人がプロサッカーチームの分析官になって、ってこれだけでもまるで漫画やんか!と思うのですが、その方が本当にジャイアントキリングを起こしたと。

この記事をたまたま読んで、へぇーすごい人がいるんだなぁと思っていたら先日新刊でこの方の新書が発売された、というのがこの本です。
何が書いてあるかよりも、誰が書いているか、で興味を読んでおもしろく読了したという久しぶりの本でした。
こんな人とサッカー観戦したら楽しいんだろうな。

まん延防止解除

一昨日、まん延防止が解除になりました。
これで第六波が収束した、ということではまったくなさそうですが。

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NHKより 【大阪府】新型コロナウイルス感染者数・死者数の推移・累計グラフ:最新ニュース-NHK


今回は山の登りが急で、下り坂はゆるやかに、という左右非対称の山になっているところが気になるところですが、
3回目のワクチン接種も進みながら、周囲にもコロナにかかったよ、ノドが痛かったよ、と普通に話ができる雰囲気にもなってきたように思います。
弊社でも本人が罹患したり、家族が罹患してお休みしたり、という人が10人を超えています。もはや普通な感じで以前のような騒ぎにはなりませんね。

いかにも日本っぽいのが、感染してしまった人が、感染をしたと周囲に話すことを躊躇させられるような空気があったこと。
周囲に迷惑をかけたくないという日本人の気遣いでしょうか。こんな気遣いが余計にストレスになりますが、それもマシになってきたようで安堵しています。
はやく普通の流行り病にダウングレードして欲しいと願います。

2022年1回目

気づいたら1月が終わっていました。
もう2月ですが、今年もよろしくお願い申し上げます。

それにしても。世間はオミクロン株の話題一色。その感染のスピードには驚かされます。
まるで年が新しくなるのを待ってタイマーをセットしていたかのように、感染が爆発的に拡がっています。
当社も、感染者や濃厚接触者にあたるスタッフが複数人、自宅で待機となっています。まったく気を抜けません。

たったの7週間前、12月27日の大阪、感染者数が11人だったのが、今はほぼ毎日12,000人を超える感染者。

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NHKより 【大阪府】新型コロナウイルス感染者数・死者数の推移・累計グラフ:最新ニュース-NHK


今週、いや来週にはピークアウト、といろんな方がいろんな意見が出ているようですが。
しかしながら、この今現在を誰も予想できなかったということは、今回もどうなるかはあまり期待せずに収束を待つしかないのでしょうね。

しっかりと気をつけながら、この冬を乗り切ってまいります。

2021年年末

年の瀬、お陰様で無事に年を越せそうです。

今年もいろいろありました。感染症に振り回されることが2年も続くなんてまったく想像していませんでした。
自らの無力さを反省すると同時に、周囲に勇気づけられることも。特に社内スタッフの皆が、仕事が暇になったことを逆に活かして、どんどん社内の整備をしてくれたり。この2年間で、10年分に値するくらいの掃除や配置換えを行えました。
この年末には、現在の社屋が建ってからほぼ変わっていなかった営業フロアを、机や棚を総入れ替えして、リセットしました。30年以上の澱をキレイにし、何もなくなった営業フロアは私も初めて見る光景です。
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それと。
コロナでバタバタとして忘れていたのですが、2011年に立ち上げた江戸堀印刷所が10年を迎えていました。
始めた時には10年が経つなんて全然思ってもいなかったのですが、地元だけにとどまらず、全国からお取引をいただけたり、当初は思ってもいなかったような使い方をして頂いたり。いろいろと可愛がっていただけるようになりました。本当にありがたいことです。

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年末恒例、窓の大きな江戸堀印刷所の窓拭きをしました。


新しい年も頑張ります。引き続きよろしくご愛顧のほどお願い申し上げます。

クリアバック製本(2)ノート

前回ご紹介したクリアバック製本でノートを作ってみました。
表紙と本文の罫線は特色の蛍光グリーンとゴールド。

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とってもよく開きます。

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表紙は0.5ミリのしっかりとした厚さ。背がないので、厚い紙でもしっかりと開きます。
本文ののどの部分に彩色した絵柄が、背の模様になる、という仕組みです。

この製本、これまでの無線綴じでは無理だった加工の制約から何かと解放されます。それが面白くっていろいろサンプルを作っています。

またご紹介してまいります。