環境対応って?

年初に報道された製紙業界の再生紙問題。おおまかにまとめると・・・

お上:再生紙を推奨します。製紙メーカーはちゃんと表示通りの古紙配合率でつくりなさい。

製紙業界:そんなの無理。お達し通りやっていては品質は保てません、だけどウチだけが正直にやったら紙が売れなくなりますから嘘をついちゃえ、品質が下がるわけでもなし(それどころかより紙としての性能はあがるわけだしまあいいか)。

こんな流れが製紙業界ごと続いてしまって、いよいよ隠しきれずに露呈した、という図式。

この問題、世の中は「嘘ついたらあかんやろ」と言っているのに、それが「いや再生紙のオペレーションは難しいのよ」という答えになっている。なんだか製紙業界は世間から買っているひんしゅく理解度が低いというか、会話が成立していないような気がするのだが。
それはさておき・・・

私は、昨年ある製紙メーカーが100%古紙廃止の発表をしたとき、「ああ、“環境対応=再生紙”というストーリーに無理が生じてきているのだな」という認識をもった。では、本当に環境負荷の少ない材料調達のあり方は何なのか?との疑問から、環境についてさらっと調べてみる。

その結果、印刷業界には地球環境を意識したいくつかの認証制度が、印刷の工程を分断した形で存在することがわかった。
例えば、製版(印刷の版をつくる工程)で材料や廃液をへらしました認証、印刷のときにアルコールや薬剤を使わないので、揮発性の有害物質を発生させませんマークだとか。
ただそのどれもが、エコ対策決定版!という感じではなく、悪さの割合をちょっと減らすようなもの。もちろんその対策を講じようとすると、設備投資をすることになる。

また設備を販売する側としては、成長率の低い印刷業界で新製品を売っていくときに、「今までとは違う切り口で、エコに絡めて売っていきましょうか」と我田引水的な雰囲気を醸している人もいる。麻雀で言うと、環境対応で1飜増し、さらにお上や業界団体が定める認証制度にハマったらまた1飜。ちょっと高く売ってもいいかな?という意志も感じないではない。(気持ちはわかるが)

こっちとしては、その認証エコマーク利用に支払うお金はもちろんのこと、今までは必要性を感じなかった機械にウン百万からウン千万というオーダーでお金がいることになる。

この投資は回収できる投資なのか?とは経営者ならずとも誰でも考えることだが、なかなか答えが出ない。「お金」と「正しさの度合い」のはざまで、ウチの会社はどうすればいいのかと逡巡していた。

先日、昔いた会社の人たちとお酒を飲む機会があり、そこで異業種である彼らに「印刷業界の環境対策って正直わけわかりません」という話をしてみた。こっちとしては「そりゃわけわからんねー(笑)」というオチになるのかなと思ったのだが、意外な答えが返ってきた。

「環境対策が自己満足的な宣伝であったり、ただのファッションにおとしめられて喧伝されていることはわかる。」

「本当に地球環境対策になっているのかどうかを問い詰めていたら、政治的な議論に陥ってしまうばかりで答えは出ないよ。」

「やった方がいいことはやったほうがいい。それだけ。」

例えばハイブリッドカーは環境にいい、という風潮はある。今までは5000CCの燃費バカ食いのスポーツカーに乗っていたのに、これからはエコだぜって格好付けて乗り換える人もいるだろう。これなら燃費が安いかもと今まで車に乗らなかった人が買うかもしれない。

しかし、本当にそれが地球環境にいいかどうかなんて誰にもわからない。
そもそも「軽自動車の方がエコ」、「いや電車に乗ればいい」という議論はいつもついてまわる。
「真の正しさを求めているのに、実際は政治的な議論に陥ってしまうばかりで、全然良い方向にいってない」というよくある構図。追求しても答えはでないんだから、そのときにいいとされていることを、多くの人が選択し続けることが本当のいいことらしい。

なんじゃそりゃとそのときは思ったのだけれども、酔いが覚めた頭で考えると、意外とそんなものかもしれないと感じるようになった。

決定版はこれだ!を求めずに、今までより1%でも良くなることをみんなで積み上げていく。要は「コツコツいいと思うことをやりなさい」というベタな解釈に私の頭は結論づいた。
この話はまた続きを。