こさえる、こしらえる

先日「つつんで、ひらいて」という映画を観てきました。
装幀家の菊池信義さんの生き方や仕事ぶり、ゼロから本の装幀を産み出すまでプロセスがきっちりと、丁寧に描かれた素敵な映画でした。
1万5千以上の本をこれまでに装幀されたそうで。ほぼ毎日装幀を考え出しても50年ちかくかかると考えると気が遠くなります。



印象的だったのが、菊池さんが語っていた「こさえる、こしらえる」という言葉。これは単に「つくる」という意味ではなく「人のためにつくる」という意味が・・・というくだり。拵える(こしらえる)という言葉を辞書でひいてもそんな語義は書いていませんが、とても素敵な言葉の使い方、解釈のしかたで、このくだりを観ていて背筋の伸びる思いがしました。丁寧に、ひとのために、誰かのためにものをつくる、という行為自体が美しさや崇高さを内包しているのでしょう。この「誰か」を想像しながら、私たちも真摯にしごとに向き合っていかねばと思います。

そういえば本棚に菊池さんの本ってあったような?と探したらありました。今読み返すとさらに面白い。


文庫本「装幀談議」91年の文庫本でした。