特殊詐欺に騙されかけた(2)

前回からのつづき。
特殊詐欺に騙されかけた(1) - 【仮称】江戸堀日記


突然、警視庁から電話があって宮城県警への出頭を求められるわ、大規模なマネーロンダリング事件の協力者に疑われるわと、大変なことに巻き込まれたかもと思い込んでいる私。完全騙されモード。
さっさと自分の無実を証明したい、そのためには何をすればいいのか?と考えを巡らせます。まさかこの電話が詐欺電話などと疑うことはいっさいなく。

宮城県警の取り調べ電話をガチャ切りされた私は、この後自分はどうすればいいのか、不安な気持ちで連絡を待つぐらいなら、こちらから今後どうすればいいのかを警察に聞いてみよう、と思い立ち、スマホで調べた宮城県警の代表に電話をします。

私「あのー、先ほど宮城県警の捜査2課のオオタニさんから取り調べを受けていたオカと申します。事件番号は令和6年(ネ)1633です。マネーロンダリング事件と聞いています。これについてわかる方とお話したいのですが」

宮城県警「捜査2課ですね、少々お待ちください」

と電話がしばらく保留になったあと、

宮城県警「あのー、そんな事件はありませんし、捜査2課にオオタニという人もおりません。」
私「えー!?ひょっとして詐欺電話でしょうか?」
宮城県警「はい、警察から発信番号が非表示で電話することは絶対にありません。それは特殊詐欺かもしれない電話です。気をつけてくださいね。」

と、これで一件落着。安堵するとともに、緊張が一気に解けてグッタリ。相手を完全に警察と信じ込んでいた自分が怖くなりました。

本当に事件に巻き込まれたと信じ込んでいた馬鹿な自分ですが、たまたまその日はLINE端末を持っていなかったお陰で詐欺師からガチャ切りされて助かったわけですが、もしここでLINEの画面を開いていたら・・あくまで想像ですが、

「犯人グループとオカさんの通話履歴がなかったという証明ができません。このオカさんのLINEが本当にオカさんのLINEであることを証明できますでしょうか?」などといって、LINE端末を通して金銭の要求に応えていた可能性もゼロではありません。

これまで何度もお年寄りがATM端末で還付金詐欺に遭っているとか、本人証明をするために送金した、という話を聞いては、そんなアホなことはやらないでしょ、と自分では思っていました。しかし、これだけ精緻に設計された詐欺師グループの事件ストーリー、演技力の上手さに私は完全に信じ込んでしまっていたわけで、すっかり落ち込んでしまいました。

恐るべし特殊詐欺グループ。アホか・・自分。

相手が警察だろうがなんだろうが、番号非表示の着信や、相手が何らかの身分を電話で名乗る場合は、ぜったいに信じてはいけない、こちらから折り返す、といいった姿勢が大切なんだなと。
自分の愚かさをもっと強く自覚しながら身を守らないといけない、と勉強させられた顛末でした。

あとで同様の事件もあるんじゃないのと調べたら、いくつか同じ構造のトークにあった人の話も見つかります。福井県の人に電話があって、今すぐ神奈川県警に出頭せよとか。わざと遠いところへの出頭を命じて混乱させるという手口なんでしょうね。実際に金銭の被害に遭った報道もあったので、まさに人ごとではありません。

この人ら、相当場数も踏んでるのでしょう。警視庁役は高飛車な語り口、宮城県警役は丁寧で優しい語り口、と段々と信じていくようにトークが設計されていました。
人ごとではない特殊詐欺、皆さんも気をつけてください!と被害に遭いかけた私からのお願いでした。

5月16日の大阪、中之島の難波橋(なにわばし)にかかる虹。落ち込んだ私にはとっても優しい、キレイな虹がかかっていました

特殊詐欺に騙されかけた(1)

5月中旬のこと。特殊詐欺に遭遇、ほぼ騙されかけました。皆さん、

番号非通知の「警察です」、と名乗る電話は詐欺です。注意しましょう。


という結論だけを先に書いておきます。詳細は以下の通り。

5月16日16時半
携帯電話に番号非通知の着信あり。講演を聴講中だったのと非通知なので応答せずにとりあえず放置。
10分後に再び非通知で着信あり。なにかの緊急事態かもしれないと思い、こっそりと会場を出て受電。

相手1「オカさんの携帯でまちがいないでしょうか?」
相手1「警視庁捜査2課です、いますぐに免許証等の身分を証明できる物をもって、宮城県警に出頭してください」

私「は?宮城県警?私いま大阪なんですけど、無理ですそんな突然に」

相手1「オカタツヤさん、大阪府XX市XXにお住まいで間違いないでしょうか?ご本人ですね?」「前科や犯罪履歴はありませんか?」

私「いったい何があったのでしょうか?」

相手1「説明するので周囲に人のいないところに移動してください。」

ここから、数十分にわたって事件の概要の説明。警視庁の人が言うには、

宮城県で組織的なマネーロンダリンググループが摘発された。
犯人の拠点からは様々な名義のキャッシュカードが押収され、その中の1枚がオカ名義の楽天銀行カードであった。
あなたも今の時点ではこの犯人グループの協力者という疑いがある。
取り調べの必要があるので、今すぐ宮城県警に出頭せよ。さもなくばあなたが犯人への協力者であるという疑いは晴れない。

私「ちょっとよくわからないので、弁護士を通させてください」

相手1「どの弁護士でしょうか?弁護士の名前がわかればこちらから先に連絡します」

私「は?いや、まず私が弁護士に相談しますのでその必要はありません」

と、ここまで会話をして、次の展開へ。今すぐ出頭できないのであれば、この事件の主管である宮城県警に電話を転送するので、電話を切らずに待っておいてください、とのこと。宮城県警と電話でつながったら、次のことを伝えてください、とのこと
ー事件番号は「令和6年(ネ)1633」
ーTグループマネーロンダリング事件

保留音で待つこと数十秒、宮城県警の人が電話に出る。捜査二課のオオタニさんと名乗る。

相手2「仙台で大規模なマネーロンダリング事件があり、犯人の拠点に踏み込んだところ、数百人分のキャッシュカードが発見され、そこに岡さん名義の楽天銀行カードが含まれていました。」
と、ここからの説明はさっきの警視庁の人の説明を丁寧になぞり、

相手2「現在、極秘の調査を行っているので、この件については誰にも相談や話をしないでください。ご家族にも言ってはいけません。なぜだかわかりますか?」

私「家族がだれかに相談するかもしれないからでしょうか?」
相手2「その通りです。家族に相談して、奥さんがまた別の人に相談して、機密が漏洩することもあります。その場合、あなたが機密を守れなかったことになり、裁判では不利な立場になります。」
私「はい、わかりました」

このあたりから、私はこの相手を疑う気持ちはまったくなく、完全に相手が宮城県警の人で、なんなら善良な市民としていくらでも協力するから、とにかく一刻もはやくこの電話を終えたいという気持ちになっていました。
ここに記しているのはあくまで会話の要点だけなのですが、実際は犯人の姿形、マネーロンダリングの内容、口座を通った金額、どういう風に今後捜査をつづけるかなど、精緻に、延々と説明がつづきます。ここまでで約40分。

相手2「携帯電話の電源はまだ大丈夫でしょうか?これからまだ聞き取りは続きますので」

私「はい、大丈夫です。まだお話できます。」

相手2「今から、犯人が犯行に使っていた携帯電話と岡さんの携帯電話の通話履歴があったかどうかを調べます。いいでしょうか?」

私「はい、どうぞ。」

相手2「それと同様に、犯行に使われていたLINEアカウントと岡さんのLINEに交信記録があったかどうかも調べますので、LINEの画面を開いてください」

私は普段、電話をする端末とLINEをする端末を分けていて、その日はたまたまの偶然、うっかりそのLINE端末を家に忘れてきてしまっていました。実にこれが幸運なことだったのです。

私「すみません、LINEのアプリはこの端末には入っていなくて、LINE端末は家に置いているので、いったん家に帰ってからまたご連絡もらえますでしょうか?」

相手2「えー、では今はLINEの画面は開けないのですね。あーそうですか。では後であらためますね。」

と言うやいなや、いきなり電話をガチャ切り。
よっぽどこの人も事件でお忙しいのね、とまだ私は相手がリアル警察官だと信じ込んでいます。

が・・しかし、ここまで時間にして1時間弱も私は捜査に協力していて、またこの宮城県警の人の語り口が、それまではそこそこ丁寧な感じだったので、このガチャ切りはちょっと失礼なんじゃないの?と、後味の悪い感じ。

このあと、どういう展開になるのかなぁ、またしばらくたってから電話があるのかなぁ・・私はどうすればいいんだろう?とぼんやり考えていました。

ここまでが自称警視庁&宮城県警のコンビによる見事な詐欺電話、私は完全に信じ込んでいました。が、次の展開へ。

つづく

靱公園の桜

今年は3月が雨がちで冷えた日が多かったせいか、29日にそろそろかなと公園に足を運んでも、まだ桜は咲いていませんでした。(3月30日に大阪に開花宣言がでました)

昨年の投稿をみたら3月20日の時点で近所の靫公園の桜が咲き始めていたようです。

昭和生まれの自分としては、桜の開花は3月終わりから4月にかけてだよなぁ、となんとなく感じていました。そうだ!「理科年表」を見てみよう、ということで調べたらやはり確実に開花日は早くなっていました。(カレンダーと暦に関心があって購入していたのです…)

ゆっくりに感じますが確実に温暖化しています

言語の本質、ハッカーと画家

「ゆる言語学ラジオ」という著名なポッドキャスト番組があります。内容があまりに秀逸で面白く、兄弟番組的の「ゆるコンピューター科学ラジオ」とあわせて、しょっちゅう聴くコンテンツとなりました。言語学に何の興味もなかった自分でさえ継続して聞き込んでしまうという素晴らしい構成のラジオです。
こちらで強力にプッシュされていた書籍がこちら。

この本、とても読みやすく書かれているのですが、内容はめっちゃ重たい。

最近、あちらこちらで生成AIについていろんな情報が氾濫しているのですが、この本を読むと「AIがつくった、良くできた文章」と、人がいちから書き起こした文章の違いは何なんだろう?ということについて考えてしまうのです。もちろん答えどころかヒントすら私ごときが出せるわけではないのですが。

ちまたでは経営に生成AIを使わないと勿体ない、的なことが喧伝されています。業務効率化や繰り返し作業といった単純作業をAIへと代替することには何のためらいもありません。しかしクリエイティブ領域で生成AIを使うことについて、どういうスタンスでいるべきなのか、腹落ちする解がまだみつかりません。
この問いに自分なりの納得感を得るためにはここ数年いろいろと試行錯誤しようと思っているのですが、その考え方の軸となるような本になると思います。

ところで全然上記内容とは関係ないのですが、ゆるコンピューター科学ラジオで最近プッシュされていた本がこちら。

ずいぶん前の2005年に発刊された本で、当時読んでめちゃくちゃ面白かったことを思いださせてくれました。「ハッカーと画家」ってタイトルからして格好良い。もう一度読んでみようと本棚から取り出したところです。

GPマーク普及準大賞

印刷物の環境ラベルにはFSC森林認証をはじめいろいろとありますが、最近お客様からGP(グリーンプリンティング)マークがリクエストされることが増えました。
日本印刷産業連合会が定めた、環境負荷を減らした所定のつくりかたをした印刷物にGPマークが付与できるというものです。
さほど有名ではなかったこのマークも、印刷業界をあげて積極的にアピールすることでポピュラーになってきました。

昨年の10月のことですが、このGPマークを積極的に推進している会社ですよ、ということで賞をいただくことができました。
「2023年GPマーク普及準大賞」というものです。賞をもらうために環境負荷の低減をアピールしているわけではないのですが、なんであれ当社営業の取組みが評価されるのは嬉しいことです。

小山薫堂さんがPR大使を長年されていました

仕事おさめ

2023年も終わりました。
ながかったコロナ禍も明けて・・気づいたら印刷や紙の需要はどんどんと減ってきているそうです。
けれども、前回のお話のように紙や本ってやっぱりいいよねーって話も耳にするようになった気がします。

つい先日、こんな記事を見つけてびっくり。素敵なお話です。
ぼく本屋。店内にめちゃくちゃ人いる。本がすごい勢いで売れてく。世界からスマホが消えたと思うくらい売れてく。紙の本のターンがきた感じがする! - Togetter

実は紙と印刷にはさらに掘り起こせる深みや楽しさ、まだ発見されていない役割があるんじゃないかな、と思っています。
それを私たちの小さな工場でコツコツと試行錯誤を重ねながら、世の中に問う!っていうと大層なので、ノックする程度に世間様にお伺いを立てていきたいと思います。

写真は今年の仕事を終えた製本現場。ほんとうにお疲れ様でした。