軽オフとか色数とか

聞くところによると、デジタル印刷機の進化に押されていわゆる軽オフセット印刷機の台数はどんどんと減少が続いているそうな。

そのうち、軽オフ?なにそれ見たことないけど?軽ってなに?ということになるのは間違いないと思う。

 


あと特色の印刷物も減っている。世の印刷物を眺めてみると、CMYKで表現されてるものが大半を占めています。印刷のコストや作業効率を考えると、出来るだけCMYKで表現するのが合理的なのは間違いないのだけど、デジタル印刷機のカラーがこれだけ溢れると、逆に特色の素敵さがより際立つ気がします。

質感の豊かな紙に、軽オフで2色の特色で作ったチラシがカッコよく、見とれてしまうことが最近ふえました。


これなら、デジタルでもなく活版印刷でもない、軽オフのオフセットと特色、という組み合わせ、もっと世にアピールしたいよな、と冒頭の話になるわけです。オフ、と名乗っている割にはそんなに高くつかないし。

 

またちょっと話はかわりますが、軽オフかデジタルかは別にして、色数が少なく、かつ格好の良い印刷物に出会うと嬉しくなります。抑制が良い具合に効いてる、という表現が適切なのかわかりませんが、そんな感じ。

下は長崎のデザイナーさんが江戸堀印刷所で作ってくださった、てぬぐいのフライヤー。ほんとにカッコイイ。ねずみ色の紙(ブンペル)に活版のスミ、白の特色とスミ(これはデジタル)。写真ではわかりにくいですが、同じスミでも活版とデジタルのスミの違いがはっきりとわかります。

 

 

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台風21号

9月にすごい台風に襲われました。6月の地震に次いで、今年は2度目の大きな自然災害です。 自然を舐めたらあかんで、と天に戒められてるような年です。 今回の台風も、大阪や兵庫で生まれ育った私は、台風が来る!と言っても「どうせ大したことないだろうな」とたかをくくっていたのですが、今回ばかりはまいりました。寺田寅彦先生のおっしゃることは真理だなと。すみませんでした。

幸い、会社が具体的な被害に遭ったわけではありません。けれども、会社のすぐ近くの大通り、土佐堀通りで車がミニカーのようにひっくり返っているのには驚きました。それも2台。 想像を全くしていない事象に日常風景の中で遭遇すると、しばらく現実が現実で無いような、変な感覚になります。

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韓国からの取材

先月のことですが、韓国の出版社の方々が江戸堀印刷所に取材に来られました。

大阪で活版印刷をされている桜ノ宮活版倉庫さんのご紹介で、うちのことを知ったそうです。 かつては活字文化の中心であった韓国から活版印刷が失われ、一方で最近の日本では活版印刷が若い人たちの間で再び見直されていることについての取材でした。

軽印刷がルーツかつ現業でもある当社(あさひ高速印刷)、江戸堀印刷所を始める前は、活字は取り扱ったことがありませんでした。

oka.hateblo.jp

活版印刷は一般的にはレトロだ、懐かしいねといった文脈で語られがち。ところが、日本語の文字をガリ版や写植、そして現代ではDTPで表現してきた私たちは活版印刷への知見はゼロでした。逆に私たちには活版印刷はとても格好よくってワクワクする、あたらしい印刷技法だったのです。

こんなマイナーなお話、通じるのだろうかと思いきや、なんだか良い感じで盛り上がりました。この方たち、ここ数年間の日本(と世界)のレタープレスの動きについてよくそんなにご存じで、とこちらが驚くくらい、広く深く掘り下げておられました。すごい!

当初は通訳を介しての会話なので表面的な、あっさりとした私たちの紹介で終わるかなーと思っていましたが、フタを開けたらこちらも前のめり。通訳の方がとてもお上手だったのもあって会話がはずみ、2時間ちかくの取材となりました。

取材の対象、この場合は活版を含めた印刷文化ですが、に対しての愛情や熱量が感じられる方々との会話は楽しいですね。

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「本の工房」の金さん(右端)、李さん、高さん(左の二人)と



追記) ちょっと嬉しかったこと。

江戸堀印刷所のロゴ

江戸堀印刷所|大阪

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は、印刷の「印」の文字と、英文社名Edobori Printingの頭文字をとって「E+P」と、両方の意味を掛けてるのですよ、といったらおお!なるほど!って感じてくださったところ。(もちろん韓国語の反応なのでたぶん、ですがニュアンスでそんな感じ。) この内容だけは、おなじ漢字文化圏の韓国と中華系の人にしか通じないネタなので、わかってもらえてちょっとばかり感激でしたよ。

地震の日の話

大阪の北部で地震がおこってから1週間が経ちました。 この数日は余震の数も減ってきて、私の生活圏ではいつもの日常と変わらなくなってきました。 たくさんのご心配の声をいただきました。ありがとうございます。 今はおかげさまで普通に戻っていることを報告申し上げます。

備忘のために当日(2018年6月18日)に経験したことを記します。

その日は朝から東京に行く予定で新大阪駅に向かう幹線道路を車で走っているところでした。 道路全体がとつぜん揺れて、一瞬何が起こったのかと思った矢先に携帯電話の緊急地震速報の音。 ああ、どっかで地震があったんだと思いきや、ラジオで自分が震源のすぐ近くにいたことを知り、大阪北部にある自宅に電話をして家族の無事を確認します。

新幹線が止まっているので東京出張もできないので、そのまま会社へ。 ラジオではすべての電車が止まっているとのことなので、既に出社してくれていたスタッフが十数名のみで会社はガラガラ。テレビやラジオからは誰かが死んだとか火事が発生とかいう話は聞こえてこないので、頼むからこのまま被害拡大しないで!そしてうちの社員さんやその家族は無事でいてよ、と祈るしかありません。

印刷機はじめ各種設備も稼働前に点検をして、損傷が無いことを確認。いくつかの落下物や転倒物はあったものの、致命的なダメージはないことがわかって安堵しました。

結局その日は、何名かが会社までの長い距離を歩いたり、電車に缶詰になりながらも線路を歩いて出社してくれたりパラパラと社内に人が増えていくのを見ながら、頼むからでかい揺れはもう来ないでよ、とこれまた祈るのみです。 大阪北部に住む数名は、家中に落下物が散乱したりライフラインが数日止まったりと被害が大きかったのですが、これだけ揺れてこの被害、それまでの日本で発生した大きな震災に比べると全然被害の規模は小さいなと感じました。

近所のコンビニやスーパーにはいつもと変わらず何でも売られているし(夕方におにぎりと水がなくなった程度)、電話も夕方には普通に通じるようになった。とりあえず今日のところは安全にやり過ごせたなという思いと、まだまだ余震がくるから油断を許さないという緊張が同居します。

東京や九州の方々からも心配するメールやLINEをいただきました。いま目の前にある、でかい地震があったんだけれども日常とほぼ変わらない景色と、遠くのお客様、取引先様が心配してくれて大災害なの?困ったら何でも言うてね、というありがたいお言葉のギャップに少し困惑しながらも、こうして声をかけて頂けることに感謝します。 また、大阪府の中でも、南大阪の人と北部の人の話をそれぞれ聞いても、ああこれだけ景色が違うのかとも驚きました。

大阪最北部にある自宅は瓦が落ちたり家中にヒビが入ったり微妙に被災している感じなのですが、高槻や茨木の一部に比べたら全然困っていないので、これは被災と言っていいのだろうか?とも思い、自分のことを客観的に見る難しさを感じます。 何はともあれこの近辺では余震と蹴球の1週間でした。

会社は無事通常運行です。心配いただきありがとうございました。

個人的に驚いたのはこれ。近所で当社が運営している江戸堀印刷所の活字がどっかーんと落ちました。

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阪神大震災や東日本大震災で活字が散乱したせいで、それまで活版印刷を生業にされていた方が「もう商売を続けるやる気が失せたよ・・」と廃業された方が多くいる、という話を聞いたことがありました。そのお気持ち、ほんの僅かでしかありませんが少し理解できたような気がします。

近所のいちょう

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江戸堀界隈はいちょうの葉っぱが大雪のよう(黄色いですが)に降り注いでいます。積雪1~2cm程度には積もっています。 なにわ筋は車が通るたびに、葉っぱがぶわっと舞ってなかなか壮観です。

靱公園のバラ

10日ほど前の話になりますが。

靭(うつぼ)公園、バラがすごいことになってました。

たくさんの種類のバラを、かくもキレイに咲かせるなんてすごい。

 

老いも若きも、みんな写真やスマホを手に写しまくってました。自分もそうなんだけど、なんでだろうな。

一方でお子さまたちは暑い日差しのもとでバラなんか全く興味なく噴水で暴れてました。

 

このバラ園を管理されている方に感謝です。f:id:okatat:20170519083318j:image

無限ピーマン

ここ最近、横長製本とか球体写真の話ばかりでしたが、今回は印刷とはぜんぜん関係ありません。

「無限ピーマン」

お料理のレシピの名前です。名前のインパクトの強さで引きつけられました。

そもそもお料理の世界に「無限」という違和感のあるタイトルがたまりません。 無限って??宇宙の端っこってどうなってるんだろう?とか、あの考えるだけでクラクラするやつ?

何のことはない、「無限」の意味はあまりに美味しすぎて無限に食べられる、ということらしいのですが。 それがあの苦いピーマンで?

ついついホンマかいなとトライしてしまいます。 ちなみに調理の工程は超絶簡単。ほぼレンジでチンだけなメニューです。

で、その結果。 f:id:okatat:20170402212439j:plain

写真が下手くそなのとあんまり美味しそうに見えないのは私の腕のせいです。お許しを。

実際はかなりお手軽おいしいメニューです。だまされたと思って「無限ピーマン」で検索してみてください。あまりのポピュラーさに驚かれること必至です。

一度箸をつけると止まらないのは本当。白いご飯との名パートナーにもなれるし、お酒のアテとしてもOKな万能選手。作るたびに「もっとたくさん作っておけばよかった・・・」とも思わなくもない。

ただ、無限か?・・・。

やっぱりネーミングのインパクトの強さでかなり得をしているレシピだと思いました。この名前つけた人、ほんま偉いと思います。

ちなみにこの無限ピーマンのおかげで無限シリーズがいろいろと派生していくことに。無限キノコや無限もやしなども誕生しました。すごい。

無限シリーズ以外はすべて有限な料理なのか?と要らぬことを考えてしまいます。

料理の名前で、「おいしすぎるので、それを目の当たりにした人の行動がちょっとおかしくなる」というユーモラスな名付けをしたメニューはほかにもありますね。 ちょっと考えただけでも、

  • よだれ鶏(口水鶏という中華料理):よだれが出てしまうほど美味しい。これは普通か。

  • 酒盗: 不穏な名前ですね。「盗まれたみたいに酒がなくなる」や「酒を盗みたくなるほど旨い」が語源だそうで。

  • 佛跳牆(ぶっちょうしょう、フォーティャオチァン) 佛跳牆 - Wikipedia: これを書いているときに調べて知りました。福建料理のスープで「あまりの美味しそうな香りに修行僧ですらお寺の塀を飛び越えて来る」からだそうです。お坊さん大丈夫か?いや、私もいちど食べてみたい。

美味しいものを食べたときに「どうして美味しいものはこんなに美味しいのだろう?」としか言えない、語彙の貧困さを痛感している私。ネーミングって大事だし、こういう名前をお料理に与えることのできるセンスは実に素敵だと思います、というお話でした。