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ボタ落ち〜デザインのひきだし

前回に続いて「デザインのひきだし」ネタをもうひとつ。
前号の17号は「印刷加工に使えるあんな紙、こんな素材」という特集で、それこそ私も初めてみるような素材が一冊の本にこれでもか!と綴じ込まれておりました。もちろん内容は超充実の一冊。

そんな前号の「ひきだし」で面白いものを見つけました。

スプレーパウダーのボタ落ちです。

ページの上部に、白い粉が固まったような汚れがみえますよね、これがボタ落ち。

印刷機から刷り出された直後のインキはまだ乾燥していません。それによってインキと印刷裏面がくっついてしまうことを防ぐために、細かい粉をスプレーのように噴いて、下の紙と上の紙がくっついてしまうのを防いでいます。
ただ時間が経つにつれて、印刷機排紙部のチェーンやらファン、その周辺のグリス油にこの白い粉がすこしずつくっついて、どんどん堆積していってしまいます。これがちょっとしたきっかけで印刷された紙の上にボタッと落ちてしまうことがあります。これがボタ落ち。
まさにボタッと落ちたパウダー塊が乾燥して、本に挟まれてベターっとくっついています。

もし私が印刷のことを全然知らなかったら、「うわっなにこの白い粉の塊、気持ち悪い!換えてください!」とすぐに本屋さんに返品・交換に走っていたことでしょう。
しかし、私も印刷会社の人間です。うちの会社も今でこそ機械清掃やメンテナンスをがんばることでパウダー排出量を激減させることができています。けれども、数年前までは当社もまさにこのボタ落ちで悩まされていました。お客さんに怒られましたよ。そんなことを思い出すと、なかなかひとごととは思えません。それどころかこのボタ落ちのお陰で、どこの会社かは知らないけどこの頁を刷ったオペレータさんや機械とつながっているんだ、とさえ感じられて、この本がすこし可愛く感じられました。

その時とった行動。もう一冊買っていた同じ本の同じページを見に行きました。
おお。ボタ落ちはないけれども油で汚れている・・・ということはこのボタ落ち本と、もう一冊の油汚れの本の印刷ロットはあまり離れていないんだろうな、などとどうでもいいことを考えてしまいました。本当にどうでもいいですけれども。職業上の習慣のようなもんです。


同じくページの上部が少し油で汚れています。

この手の印刷上のトラブル、もちろん自社で印刷したものがお客さんの手に渡りクレームになったら、それこそ平謝りです。だけど、これが印刷と製本のトライアルを重ねに重ねた、ひきだし本から出たボタ落ちなんだから・・誠に個人的な感想ではあるけど微笑ましいなぁと。というわけで本屋さんに交換に走るのはやめて、レア版として当社永久保存とあいなりました。