当社では組版、製版、面付け、デジタル/オフセット印刷、製本加工といった社内のスタッフが集まって「やったことのないことをやる、とりあえず作ってみる」をテーマにしたミーティングを定期的に開催しています。今年もみんなでコツコツと、誰が使うともわからないモノを試作しては失敗し、また修正してはやりなおし…。数々の屍を乗り越えながら、無事それなりのカタチになったものがいくつかあります。
前回、小ロットから作れる”伝統的な”日めくりカレンダーを作ったと書きましたが、これもそのミーティングから生み出された商品です。
そしてまた新たな小ネタが生まれました。豆本です。
先日、小さな本の製本はできますか?というお問い合わせがありました。
当社「小さな本ってどれくらいの小ささ?」
お客様「マッチ箱くらいの・・」
うーん、できないことはないけどいくつかの課題があります。
大きく作った本を小さくなるまで断裁すればいいんじゃない?とそんな簡単なものではないのです。
普通に無線綴じをした場合、機械の許容する最小サイズはA5。マッチ箱サイズはだいたいA9サイズ。
理屈から言うと1枚のA5の紙からハサミでA9を切り出せば、16枚のA9サイズとなります。しかし実際はそうはいきません。
問題点は大きく2つありまして、
- 無駄になる紙の面積が大きい
A5サイズで、例えば200ページの無線綴じ製本をした後に細かく断裁して切り出していくと、実際にはアキが必要だったり、断裁の際に生じる表紙と本文の損傷もあったり。諸々を加味するとA9の本は良くて3冊しか切り出せません。
無駄が多すぎます。結果として思ったよりもはるかに高くついたり。
- 本は作れても開きの悪い本になる
小口(本の幅)のサイズが小さければ小さいほど、本は開きにくく感じます。
市販の手帳のような縦長サイズのものは糸かがり製本、背を糸で縫っているので左右に大きく開くことが出来ます。
けれども通常の無線綴じ、新書サイズのような縦長を想像してみたらわかりますが、開いてもすぐにパタンと閉じてしまいますよね。
A9サイズで無線綴じの製本をしたところで、とーっても開きの悪い本になるだけであまりに実用性に難ありかなと。
で、結局お客様からの問い合わせについてはお断りしたのですが、後から考えてみると、「そうだ、クリアバック製本でつくればいけるかも!?」と思いたちました。
クリアバック製本というのは当社オリジナルの無線綴じ。本の開きを邪魔する背表紙をつかわず、PUR糊という強固な糊で無線綴じをしたものです。
とーってもよく開くのがメリットです。開くといえば普通のメモ帳も糊で固めているだけなのでよく開きますが、すぐに落丁(ページが抜け落ちてしまう)してしまうので、通常の書籍には使われません。
このクリアバック製本だと、よく開くうえに丈夫さは普通の無線綴じ以上。落丁の心配は無用です。
ということで。とりあえずやってみました。
できたのがこちら。
A5の200枚以上の紙束から10冊は切り出せるという、無駄のない豆本が完成しました。さて何に使うやら。